中国古典小説選11 閲微草堂筆記・子不語・続子不語 【清代III】
えつびそうどうひっき しふご ぞくしふご
儒家の言のパロディー
-
書名カナチュウゴクコテンショウセツセン11
-
著者
-
シリーズ
-
定価7,040円(6,400+税)
-
ISBN9784625664106
-
Cコード0398
-
出版社
-
出版年月日2008/07/10
-
判型・ページ数A5・432ページ
-
在庫在庫あり
-
ジャンル
購入 by Online
三作品ともに“怪異”を語った、いわゆる「志怪小説」である。「閲微草堂筆記」は、清代の大学者紀昀(きいん)の作。「閲微草堂」とは、彼の書斎の名である。「四庫全書」編纂の中心人物であった紀昀が、各話の冒頭で必ず出所を明らかにしながら、幽霊や妖怪について語っている。「子不語」「続子不語」は、清代の在野の大詩人袁枚(えんばい)の作。女性好きで食通としても有名だった袁枚が、『論語』述而篇にある「子ハ怪力乱神ヲ語ラズ」という儒家の言のパロディーとして、「子不語」(孔子が語らなかったこと)、すなわち怪異を集め、語ったのが本書である。
◇
中国における怪異譚の最高峰として熱狂的な愛読者を獲得した『聊斎志異」に対して、虚構に託して怪異を語ることは、怪異を事実としてありのままに記録する中国の志怪の伝統から見るとそれは邪道である、と批判し、清代において志怪の正統を示すことをめざした作品が現れた。それは大学者紀昀(一七二四~一八0五)による閲微草堂筆記である。学者として、宋学の亜流である「道学者先生」を批判する精神は、この志怪書の中にも流れており、またここに書かれている怪異は、あくまで紀昀自身が見聞したことをそのまま伝えるという手法で語られている。典雅な古文で綴られる文章の中に、著者の博学な学者としての確かな眼で人生を見すえ、紀昀なりの解説や教訓も盛りこまれ、短い個々の話を、単なる怪奇譚だけに終わらせていない。
子不語(袁枚(一七一六~一七九七)の作)二題名が、論語に見える「子不語怪力乱神(子は怪力乱神を語らず)」のパロディーであることは明白である。袁枚は早くに官を辞し、南京に「隨園」と号する庭園を造り、詩・文に専念した自由人・風流人として名を知られている。『子不語」は袁枚の晩年の著である。『閲微草堂筆記」と同様に、道学者先生を嫌う著者の自由人としての反骨精神2面がこの怪異小説からもうかがわれるが、作風としてはむしろ『聊斎志異』に近い.
子不語
続子不語
黒田 真美子 編著
福田 素子 著
竹田 晃 編